卒後2年目で駅前のコンビニ歯科で勤務するものですが、院長から儲けたいならスライスカットを覚えるように、と指導されているのですが、スライスカットは削りすぎる感じがするし、虫歯が再発するので、やめたいのですが、具体的に何が悪いのか説明できずに悩んでいます。
具体的に何が悪くて、将来はどうなるのかご指導ください。
福田晴久
結論:
スライスカットは日本の歯医者さんが儲けるために開発された虫歯治療方法なので短時間で多くの歯を処理できますが、歯を削りすぎるため、虫歯は治るどころかさらに悪くなり、歯もどんどん悪くなります。
説明:
日本の歯医者さんの治療時間と、アメリカ歯科標準治療「ほんとうの治療」を行っているG.V. BLACK DENTAL OFFICEの治療時間には、非常に格差があります。
日本の歯医者さんでは10分で済むような虫歯の治療に、G.V. BLACK DENTAL OFFICEでは2時間も3時間もかかることがあります。
その理由を鞍作路加(くらつくりのルカ)の症例で説明します。
#2,3 Amalgamです。
Amalgamについて知らない人は「ほんとうの治療」のAmalgamと、虫歯治療について知らない人は「ほんとうの治療」の20年持つ治療を良く読んでから、このDental Diaryを読むと理解が深まると思います。
では鞍作路加(くらつくりのルカ)の治療です。
修復治療ですからラバーダムは必須となります。
右上の状態です↓。
#2,3に注目します↓。
典型的なスライスカットのどうでもインレーです↓。
スライスカットの意味は後で説明します。
どうでもインレーを除去します↓。
昨日と同様な赤い物体が現れました。
これはThe Dentists JAPANのメンバー10名からの報告で15年ほど前から出始めた松風社製のベースセメントだそうです。
ベースセメントというのは冷たい物を飲んだり食べたりしたときに滲みないように使う材料です。
除去します。
するとベースセメントの下は虫歯の大爆発でした↓。
虫歯を除去する専門のドリルで削ると虫歯は白い粉になって飛び散ります↓。
虫歯を全部取りきった後の状態です↓。
#3の真ん中に茶色の部分がありますが、これはたった今、除去したどうでもインレー以前に詰められていた、あまるがむに含まれていた亜鉛とスズのイオンが溶け出して沈着した色素の色であり、虫歯ではないため問題はありません。
また神経のかなり近くまで接近しましたが、そのような場合は、水酸化カルシウムを含んだ薬を塗って二次象牙質の形成を促します。
二次象牙質というのは、歯が自分で作り出す神経を守る壁のことで、これが出来ると歯は再び強くなってゆきます。
その後、虫歯菌が触れると死んでしまうAmalgamを詰めることにより鞍作路加(くらつくりのルカ)の#2,3は二度と虫歯にならないという現実に直面でできました↓。
しかし、このままでは歯と歯の間が空きすぎているし、歯の強度も足りないので、ゴールドクラウンにして完成となります。
ところで、おかあさん、スライスカットってどのくらい多く削られているの?と鞍作路加(くらつくりのルカ)の子供のエバーグレースが聞くそうなので説明します。
スライスカットというのは歯の削り方で、これを発案したのがイカシカの故総山先生です。
歯科医療関係者では国会議員を除くと唯一勲二等になった偉い人です。
山崎先生がアメリカから帰国し東京医科歯科大学歯学部に来たばかりの時、当時は引退して名誉教授となっていた総山先生ものんびりしていたので、毎週定期的に、歯科新棟の2階の病院長室の隣にあった名誉教授室で話し込んでいました。
総山先生が話す人で、山崎先生は聞く人でした。
山崎先生が「スライスカットは歯には良くないのではないですか?」と遠慮深く聞くと、総山先生は「そりゃ、そうだよ。あんなことしたら歯はすぐ悪くなるよ」ときっぱりと言いました。
「でも、先生が開発したと、ひこべえ(北大教授佐野英彦)が言ってましたよ」と私が言うと、「それは昭和の40年代は歯医者の数が足らず、いかに短時間で多くの歯を治すことが出来るかが重要で、内容は二の次だったからだよ」と総山先生は言いました。
スライスカットというのは、歯と歯の隣接面を、どんな形態の虫歯であろうが、とりあえずドリルでスパッとスライスするように真っ平らにしてしまう方法なのです。
スライスカットの利点は、
1)歯医者が高度な技術を覚える必要もなく、1本5分以下で削ることができ、後は衛生士や助手が印象を採り、テンポラリーを付けて終わりにできる。
スライスカットの欠点は、
1)歯質を削りすぎる。
2)インレーを入れるための削り方なので、最低2回歯医者に行かなければならない。
3)インレーなのでインレーの内部の面と歯の面との接する部分が大きいこの方法では、隙間ができやすく、よって隙間からバイ菌が歯の中に侵入して虫歯になりやすい。ということで鞍作路加の#2,3がスライスカットではなく正しい削り方をされていたら失なわずにすんだ部分を赤い点線で示すと次のようになります↓。
おかあさん、なにこれ?とエバーグレースが言いそうなのでNikkiの症例を挙げて、まずは正しい削り方を示します。
#2に注目します↓。
Nikkiの#3はパラのどうでもインレーでしたが、当然歯の中は虫歯の大爆発なので#4との境はそのような状況下での正しい治療を受けた歯の削り方はこのようになります↓。
このような削り方をすると山崎先生のような達人でも1本の歯につき30分以上はかかります。
もしNikkiの#3が日本の歯医者さんでスライスカットをされた場合は、治療時間は5分ですが、赤点の部分は一瞬にして削られてしまいます↓。
上の写真を見ただけでも、正しい治療とスライスカットでの治療とでは歯の削られる量が全く違うことが目の見える人ならわかるはずです。
そして何故日本の歯医者さんがスライスカットをするかといえば、単に簡単に早くできるのでたくさんの患者をさばける!ということなのです。
日本の歯医者さんの開業医が日本全土で6万件を超え、いまやコンビニより多くなったので、巷ではコンビニ歯医者と呼ばれています。
一方、患者の数は同じですから、歯科医院一件に対する患者の数は、どんどん減り始め、今から20年前は1日100人以上患者の来ていた駅前の歯医者さんには、今は1日10人前後しか来ないのだそうです。
だったら、もっと時間をかけて正しい治療をすれば良いと思うのですが、日本の歯医者さんにはそんな山崎先生の声は届かないので、今でもスライスカットをしまくり、日本人の歯を破壊し続け、挙げ句の果てはインプラントで儲けることに奔走しています。
日本の歯医者さんにしか行けない人でも、スライスカットをしまくる歯医者はハカイシャハイシャだ!ということをもう好い加減で理解したほうが良いと思います。
そんなデタラメな治療をしまくる日本のハイシャさんばかりの日本で、何が悪くて何が良いかをわかった鞍作路加(くらつくりのルカ)の#2,3はこれでもう大丈夫です。
07/30/06
04/02/18 updated
*** 虫歯・神経治療***
01. 究極の虫歯治療とは
02. ラバーダム・奥歯
03. ラバーダム・前歯
04. 虫歯の再治療
05. お気楽レジンの問題
06. メタルフリーの罠
07. GI・グラスアイオノマー
08. 楔(くさび)状欠損
09. ガルバニックショック
10. 保険の銀歯の問題点
11. スライスカット
12. 一生持つクラウンの治療
13. 一生持つブリッジの治療
14. 奥歯に白い歯はダメ!
15. 口臭の原因は虫歯
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